川はどちらへ流れるか



東北地方、岩手県から宮城県にかけて流れる北上川。この川の長さは249m。日本で5番目に長い川です。

ところで、川はどうして一方向にしか流れないのでしょうか。北上川は北から南に向って流れていますが、逆に流れることはありません。長い間同じ方向にしか流れないのです。不思議に思いませんか?

 水は高いところから低いところへ流れます。地球には引力といって、ものを引き寄せる力がありますから当たり前のことですね。水だってものですから、高いところから低いところへと流れるわけです。

「えっ、じゃあ川の上流の方が高くて下流の方が低いの?同じような高さにしか見えないけれど・・・」と思う人もいるかもしれません。確かに川の中流域や下流域では、一つの場所から上流と下流を見比べても高さの違いを感じることが難しいかもしれません。

 ここに、3枚の写真があります。これは、北上川の上流域と中流域、そして下流域の様子の写真です。この写真からどんなことを感じますか?

一枚目の写真【図−1】は北上川の上流域です。ここは山の中です。日本で5番目に長い川でも、上流域ではひょい、とまたいで飛び越えることができます。ここは岩手県岩手町御堂というところで標高約400mです。

 二枚目の写真【図−2】は中流域です。岩手県北上市、桜並木で有名な展勝地の付近です。この辺りでは川の幅は約150m。もう簡単に越えることはできません。昔は渡し舟で行き来していたそうです。北上市の標高は約50mです。

 三枚目は北上川の河口付近の写真【図−3】です。川の幅は約700mにも達するところもあります。川の流れも非常にゆっくりとしています。海のすぐ近くですからこの辺りの標高は0mになります。

 こうしてみると北上川は約400mの高低差で流れていることが分かるでしょう。ちょっと見ただけでは分からないのですが、やはり高いところから低いところに向って流れているのです。この様子を表で表したのが【表−1】です。

 日本の川は、世界の大河に比べると流れが速い、と言われることがあります。日本の川は高低差が大きく、すぐ河口に流れ着くので「滝のようだ」と表現されることもあるそうです。事実、エジプトにあるナイル川やアメリカ合衆国にあるミシシッピー川などは流れが分からないくらいゆっくり流れているのだそうです。これらの川は高低差があまり無いために非常にゆっくりと流れているのです。いずれにしろ川は高いところから低いところにながれているのには変わりはありませんね。

おもしろ理科小話A宇宙と生き物の世界(星の環会)20043月 Hideyuki Miura

inserted by FC2 system