地層から分かること



岩手県北上市の西側、和賀川中流石羽根ダム人造湖のほとりに縞模様をした大きながけがあります。「綱取断層」と呼ばれているものですが、正確には断層ではなく、長い間、川の水や風などの力によってこの縞模様が現れてきたのだと考えられています。いったい、この縞模様はなぜできたのでしょうか。

実は、この大地の縞模様は綱取断層だけのものではありません。みなさんが今立っている地面の下を真っ二つに分けて横から見てみると、同じように縞模様になっているのです。「そんな、信じられない」と思う人もいるかもしれません。実際に見ることができないのだからしょうがありませんね。しかし、自分たちの住んでいるところをよく確かめてみてください。工事で山や崖のような場所を切り崩している所はありませんか。川沿いで地面の様子が見えるようなところはありませんか。案外、縞模様になっている場所が見つかるかもしれません。

この縞模様は、地層と呼ばれています。私たちが立っている大地はものすごく長い時間をかけて作られています。火山が爆発して、噴火の際に出てきた石や灰が降り積もって出来た大地。海や湖の中で流されてきた土砂がたまって出来た大地。ある時期突然大きな地震などで海の底から現れてきた大地。海の中で積もった黒い泥の層が盛り上がって地上に現れ、火山灰が降り積もったとします。この降り積もった層の断面を見ると、泥の色と灰の色は違うので縞のように見えるのです。これが縞模様の正体です。

最初に紹介した綱取断層は、砂岩と凝灰岩という岩の層がいくつか重なって出来ています。地層は古い順番に重なっていくので、一番下の層が最も古い地層、一番上の層が最も新しい地層、ということになります。この地層の様子を詳しく見ていくとさらにいろいろなことが分かってきます。

まず、その土地が作られた時の様子が分かります。この綱取断層の地層は砂岩と凝灰岩の層が重なっている、といいましたが砂岩や凝灰岩は海の中で作られたものです。ということは、この地層が作られた頃は海の底だったことが分かります。今は奥羽山脈、山々に囲まれた場所なのに、昔は海の底だったとは、とても驚いてしまいます。

もう一つ分かることがあります。何とこの地層が作られた時代が分かるというのです。海などの水の中で作られた地層の中からは、その地層が作られた時代の生き物が石のような状態で発見されることがあります。化石というものです。綱取断層の中からはクジラやイワシの骨の化石が発見されました。発見された化石をもとに詳しく調べたら、この地層ができたのは今から約千数百万年前、新生代新第三紀という時代だということが分かりました。

化石を調べると地層が出来た時代の様子が詳しく分かります。例えば、サンゴの化石が出てきたところは温暖な気候で、透明で浅い海だったということも分かります。ブナの葉やマンモスの化石が出てくるところは、当時寒かったことが分かります。地層や、地層から出てくる化石は何もしゃべりませんが、このようにいろいろなことを私たちに教えてくれるのです。みなさんも遠い遠い昔のことを想像しながら、地層観察や化石の採集に出かけてみるのもよいのではないでしょうか。

おもしろ理科小話A宇宙と生き物の世界(星の環会)20043月 Hideyuki Miura

 

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