イチョウの木は「生きている化石」といわれることがあります。「化石が
生きているだって?」と変に思う人もいるかもしれません。でも、本当のこ
となのです。
イチョウのなかまは、約2億万年も前からこの地球上に生きていたと考え
られています。人間が地球上に登場したのは約400万年前といわれている
ので、イチョウがものすごく昔の時代から生きていたことがわかります。そ
のころは、イチョウのなかまがたくさん地球上の大地に成長していました。
しかし、今ではイチョウだけが生き残っているのだそうです。まさに「生き
ている化石」です。イチョウは公園や神社などに植えられていることが多い
ので、わりと身近なところで見つけることができます。秋になると黄色いお
おぎ形をした葉っぱを手にしたことがあるでしょう。
【写真4-1 冬のイチョウ】
【写真4-2 夏のイチョウ】
【★図4-3 イチョウの葉】
「生きている化石」といわれるくらいですから、イチョウには古い時代の
植物の特ちょうが残っています。イチョウにはオスの木とメスの木があるの
です。
オスの木には雄花(おばな)だけがさき、メスの木には雌花(めばな)だ
けがさきます。花といってもサクラの花のようなめだつ花ではなく、花びら
もありません。
【★図4-4 イチョウの雄花】
【★図4-5 イチョウの雌花】
サクラの花にはおしべとめしべがありました。ところがイチョウの場合は
サクラとはちがって、おしべの部分が雄花、めしべの部分が雌花に分かれて
います。雌花、雄花に分かれている植物はたくさんあります。例えば、カボ
チャやキュウリ、ヘチマなどのウリのなかまは、やはり雄花と雌花が分かれ
ています。でも、オスの木とメスの木にはわかれていません。1つの植物の
体に雄花、雌花両方がさくのです。イチョウの場合は全然べつの木に雄花と
雌花が分かれてさくのが特ちょうです。雄花で作られた花粉が風などで運ば
れて雌花につくことで種子がつくられるのです。ですから、イチョウの場合、
種子はメスの木にしかできません。
イチョウの種子はギンナン(銀杏)と呼ばれ、ゆでたり、いったりして食
べることができます。茶わんむしの中に入っている緑色した豆のようなもの
がギンナンです。外がわは黄色でやわらかく、その中に白くてかたい皮があ
ります。この外がわの黄色い部分を取り除いた残りの部分を食料品店などで
も売っていることがあります。
【★図4-6(ABを組み合わせて) イチョウの種子(ギンナン)】
さて、イチョウの木は道路のわきにも植えられていることが多いのですが、
植えられているのはオスの木かメスの木かどちらが多いと思いますか。
「メスの木だとギンナンをとることができるから、メスの木かな?」と思
った人もいるかもしれませんが、道路や公園などに植えられているイチョウ
はほとんどがオスの木なのです。実はギンナンの黄色い部分はうんちのよう
なとても強烈なにおいがするのです。ですから、ギンナンができるメスの木
を道路のわきに植えると、秋には町中がいやなにおいでいっぱいになってし
まうのです。
古くからイチョウが植えられている神社や、歴史が古い学校などにはメス
の木が植えられている場合がありますので、秋にはギンナンをとりにでかけ
てみるといいですよ。
たのしい理科小話@生きているもの(星の環会)2005年3月 Hideyuki Miura