地球は回っている
●天動説と地動説
「地球は回っている」という話を聞いたことはありませんか。一方,「太
陽が東から西に動く」という話を聞いたこともあるでしょう(36話)。どちら
が正しいのでしょうか。それともどちらも正しいのでしょうか。
今から400年前までは、地球が回っているという考えはあまりありませ
んでした。そのころの人々は、地球は止まっていて、空(天)が動いている
ものだと考えていたのです。このような考えを天動説といいます。
その後,近代科学の父と言われるガリレオや、万有引力を発見したニュー
トンといった科学者は、力学や宇宙の研究を進めて、地球が回っているとい
う考えを確かにしました。この「地球が回っている」という考えを地動説と
いいます。
ガリレオは、この地動説を発表したために,「とんでもないことを考えて,
人々にウソを言いふらした。動くのは太陽だ。」と裁判にまでかけらたほど
です。そのくらい当時の人々にとっては地球が動いていることが信じられな
いことだったのでしょう。
●回っていればふきとばされる?
それでは、なぜ「地球が回っている」と信じられなかったのか考えてみま
しょう。
昔の人は、地球が回っているならば、地球上のものが宇宙にふきとばされ
てしまうと考えたのです。なるほど、遊園地のコーヒーカップなどでぐるぐ
る回転していると、外にとばされそうな感じがします。地球が回っていれば,
地球上のものはみんな宇宙空間にふきとばされてしまうというのです。
【図38−1】
「地球はきっとゆっくり回っているからだいじょうぶなのさ」とあなたは
思うかもしれません。しかし、本当にゆっくり回っているのでしょうか。
地球の直径は約1万3000km。この大きさで24時間で一回転しているの
で、計算してみると、赤道上では時速1670kmもの速さで動いていることに
なります。ちょっとピンときませんね。新幹線の8倍速く,1秒間に460
mも動いてしまうほどのスピードです。こんなにものすごいスピードでも、
地球上のものが宇宙にとばされないのは、地球に重力という力があるからで
す。
【図38−2 重力】
重力とは、地球の表面にあるものを、地球の内側に向かって引っぱる力の
ことをいいます。この力があるために、私たちは地球の外に吹き飛ばされて
しまわないのです。この力学が昔は分からなかったのですから、天動説が信
じられていても仕方のないことだったのでしょう。
●どちらが回ったとしても見かけの動きは同じ?
地球儀を、日本列島から見てアメリカ大陸のある方向に、回してみましょ
う。このような地球の回り方を地球の自転と言って、約24時間で1周して
います。こうすると,地球上からは、宇宙にある太陽が毎日東から西に動い
て見えます。
地球の周りを太陽が動いていても,地球が自転していても,地上の私達が
見る太陽の動きはどちらも同じになります。
ところが,動いて見えるのは,太陽だけではありません。夜見える約6000
の星も月も,みんな1日で1回転しています。
どうして星の動きは、すべて東から西へ,1日で1回転と決まっているの
でしょうか。例えば,黒板消しをたたくとチョークの粉が飛び散ります。そ
のときの粉が,すべて1日で東から西へ1回転する規則正しい動きをしたら,
あなたは不気味だと思うでしょう。何千の星の動きがみんな同じなんて,そ
んな偶然があるのでしょうか。
あなたが止まって部屋の物が1回転するのと,部屋の物が止まってあなた
が1回転するのでは見える景色は同じです。太陽が動くのか地球が回るのか
も,同じように見える動きでどちらが正しいかは決められません。ほかの事
を考える必要があります。太陽は地球の約100倍の大きさがあり,約300000
倍重いのです。太陽の他,数千の星が地球のまわりを回るより,太陽や他の
星が止まっていて地球が回っている方がありえる話だとは思いませんか。
たのしい理科小話A宇宙ともの(星の環会)2005年3月 Hideyuki Miura