「普通教室の窓辺」活用の基本と応用 「モヤシを教材として活用する」  三浦 秀行

●楽しい「生物」の学習をするために

「生物単元はどうも苦手…」という方は案外多いのではないでしょうか。物質とエネルギーに関する単元は、準備と予備実験さえきちんとすれば、比較的教師の意図どおりに授業を展開しやすいものです。しかし、生物単元ではそうでないことがままあります。特に植物の成長を観察する…という単元は、天候に左右されたり、子どもの世話がうまくいかなかったりして失敗する、なんていうこともあるでしょう。観察期間が長期に及ぶために子どもの学習意欲が維持できない、ということもあります。また、私の場合ですが、教室から畑(観察園)まで距離があったため、頻繁に観察に通うことができず、十分な観察をさせることができなかったという失敗もありました。

そこで、教室の窓辺を有効に活用して、植物の観察を行う手法がないか考えてみました。

●「モヤシ」に注目!

天候にもあまり左右されず、誰にでも簡単

に栽培できる植物として、私はダイズに注目しました。特に豆モヤシの栽培は教室で簡単に行うことができ、教材としての可能性をたくさん秘めているのでないかと感じています。

モヤシは、わずか一週間で栽培することができます。世話も簡単です。また、成長の様子を毎日目で確かめることができるので、子どもたちは目を輝かせて栽培に取り組み、植物の生命の力強さを実感することでしょう。 

●豆モヤシを作ってみよう!

 日光に当てないで、種の中の養分だけで育てたものをモヤシといいますが、その中でも特にダイズを用いて作ったモヤシを豆モヤシと呼ぶようです。スーパーなどでよく見かけるモヤシは、ブラックマッペや緑豆という豆を使ったものが主流ですが、ここでは、簡単に入手できるダイズを使って、モヤシを栽培する方法を紹介します。

●準備するもの

ダイズ(種類は何でもよいですが、食用のもの。栽培のための種にするものは食用にならないので注意。スーパーなどにおいてあります。)いちごパック2個、ティッシュペーパー、ダンボール箱、あれば霧吹き

●栽培のしかた

1.ダイズをよく洗います。流水に10分ぐらいさらすとかなり滅菌されます。

2.よく洗ったダイズを一晩水につけます。

3.育苗する容器はイチゴパックを使います。2つのうち1つは底に水が流れ出るように直径5mm位の穴をたくさん開けておきます。

もう1つのパックは受皿にして【図−1】のようにセットします。(実はこの容器は、何でも良いのですが、イチゴパックは透明なので観察に適しているので用いました。)

4.穴を開けたイチゴパックにティッシュペーパーを敷き、水で濡らします。

5.一晩水につけておいたダイズの中から、傷がついている物や色が悪い物を取り除き、重ならないようにティッシュの上に並べます。この時、指でおくよりも清潔なピンセットや箸などを使うと良いです。傷がついた豆を並べたり、指で触ったりすることによって雑菌がつくことをなるべく避けます。これを怠るとカビが生えたり枯れたりして、食用にならなくなってしまいます。

6.1日に2、3回霧吹きで水を与えます。乾きすぎず、水に浸しすぎず、あたかもダイズが土の中にいるような気持ちにさせるのがコツです。そして、1番肝心なのが真っ暗な場所に置くこと。ダンボール箱などをかぶせても良いでしょう。ただし、決して光が入らないようにします。

7.ダイズは15℃から20℃前後で発芽するとされるので、あとは温度と水の管理をすれば、1日で根が伸び始め、1週間で立派なモヤシが出来上がります。

●観察のポイント

1.吸水させる前後のダイズを比較させます。ダイズは水を吸うことによって、生命活動をスタートさせるスイッチを入れます。吸水したダイズは、わずか数時間の間にもとの大きさの約2倍の大きさになり、根になる部分(幼根)を出そうとします。

2.ダンボールの横に直径2〜3cmの穴を開けたものの中でモヤシを栽培します。するとモヤシは光の入る穴の方向に伸びようとします。これは、植物が生長に必要なオーキシンという植物ホルモンの影響です。オーキシンは芽の先端で作られ、光の当たる反対側の茎に多く送られ、その部分の成長が速くなります。だから、光の方向を向いているように伸びていきます。この様子を観察させます。

3.窓辺の明るいところには光が当たるモヤシを栽培し、比較させながら観察させるのも面白そうです。

●「モヤシ」をどう授業に活用するか

「モヤシ」は様々な場面で活用が可能だと考えています。例えば、3年生の理科では種子から発芽する場面を教室でじっくり観察させるということもできるでしょう。5年生では植物の発芽条件の実験素材として活用できます。また、栽培したモヤシの調理法を調べたり、実際に調理して食したりすることによって、総合学習や家庭科などへの応用も可能だと思われます。モヤシにしなかったダイズは畑で育てて収穫し、豆腐作りや納豆作り、などというのも楽しそうです。

ダイズ以外(ヒマワリ、インゲンマメ、ソバなど)でもモヤシを作ることは可能です。自分の授業プランに応じて、工夫して活用してみて下さい。

楽しい理科授業(明治図書)20035月号 Hideyuki Miura

inserted by FC2 system