顕微鏡でいろんなものを見てみよう
小学校5年生の理科の学習で、初めて顕微鏡の使い方を学びます。私は、5年生の担任になった時は、最初の理科の授業で顕微鏡の操作の仕方を教え、自由に使える顕微鏡を一台教室に置いておくことにしています。すると、子どもたちは様々なものをもってきて、楽しそうに観察を始めます。髪の毛、紙、植物の葉、花、花粉…様々なものを自由に観察できる場が、教室にあってもよいのではないでしょうか。プレパラートを作るのがめんどう・・・と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、セロハンテープに見たいものを貼り付けて、それをスライドガラスにつけるだけで、簡単プレパラートの完成です。この方法で、是非いろいろなものを観察させてみてください。
もちろん、教師が意図的に素材を与え、観察させることも大切なことだと思います。例えば、初めてミクロの世界に触れるのであれば、少しインパクトのある素材を子どもたちに見せたいと思います。春先だからこそ入手できる素材…といえば、ツクシの胞子をおすすめします。
ツクシの胞子には4本の弾糸(だんし)がついており、まるで、4本足のタコのような形になっています。しかもこのタコの足は動くのです!子どもたちは、このタコのダンス(胞子の弾糸の動きですね)をとても喜んで観察します。
【ツクシの胞子の観察のしかた】
何も難しいことではないのですが、ちょっとしたポイントだけ書いておきます。
1 ツクシを入手する
ツクシはスギナの胞子茎(ほうしけい…胞子をつける特別な茎)です。スギナはシダ植物のなかまなので、種をつくらず胞子で増えます。スギナの頭の部分が開ききっていると、全ての胞子が飛び散った状態の場合があります。そこで、白い紙を用意し、紙の上でツクシを軽く振ってみて、緑色の粉(胞子)がパラパラと落ちるツクシを入手してきます。
2 スライドガラスにセットする
先ほどの緑色の粉(胞子)をスライドガラスに少しだけのせます。カバーガラスはかけません。
3 顕微鏡の使い方をきちんと指導する
倍率は100〜150倍位で。顕微鏡の操作の仕方はしっかりと指導したいものです。
(顕微鏡操作の基本)
@ いちばん低い倍率にして、接眼レンズをのぞきます。鏡を動かして、視野を明るくします。直射日光が当たらない明るい場所で使用させるようにします。光源装置を使うと便利です。
A のせ台にプレパラートを置き、とめ金でとめます。
B 真横から見ながら調節ねじを回して、対物レンズとプレパラートをできるだけ近づけます。
C 調節ねじを少しずつ回して、対物レンズをプレパラートから遠ざけていき、はっきり見えるところでとめます。
横から見ながら対物レンズを下げて、対物レンズを遠ざけながらピントを合わせるのがポイントです。下げながらピントを合わせると、対物レンズとプレパラートが接触してしまい、レンズを傷つけてしまう恐れがあります。きちんと説明すると、すぐ上手に操作できるようになります。
4 観察する
何もしなければ、このように見えます。4本足が確認できるはずです。
【写真1:ツクシの胞子】
5 ツクシの胞子のダンスを観察する
ステージにセットしてあるスライドガラスにむかって、やさしく「はあ〜」と息を吹きかけます。「ふぅ〜」と吹きかけると胞子が飛んでしまいます。やさしく、凍えた手をあたためる時のように息を吹きかけます。すると胞子の弾糸はキュッと丸まり、徐々にまた弾糸を広げ始めます。
【写真2:弾糸がまるまった胞子】
【写真3:ダンスするように見える胞子】
今回は、授業で活用した例ですが、春先にクラブ活動を行う場合でもきっと子どもたちは喜んで観察できるのではないかと思います。
理科教室(星の環会)2007年5月号 Hideyuki Miura